研究科長メッセージ

はじめに

龍谷大学社会学部は、教学の基本に「現場主義」を掲げています。そして、皆さんが学ぶ龍谷大学大学院社会学研究科も同じく「現場主義」を掲げています。
しかし、なぜ私たちは「現場主義」を掲げるのでしょうか。自然科学にしろ、社会学や社会福祉学などの社会科学にしろ、それらが科学である以上、研究対象の「現実」の姿を知ることは大変重要です。「現実」の姿を現場において知り、それを「理論」と「実践」に反映させる。それを何度となく繰り返す。この繰り返しによって「科学」は進化していきます。しかし、「現場主義」の名の下に私たちが考えているのはこれだけに止まりません。

人間は言葉を発することで他者とコミュニケーションすることができます。しかし、私たち人間は、自然界の物質や動植物あるいは人間が作った機械などの「モノ」とは、普通ならば、コミュニケーションすることができません。そこで、自然科学者は、さまざまな計測機器をもちいて「モノ」とのコミュニケーションを図ってきました。その成果が自然科学の進化です。
しかし、自然科学による「モノ」とのコミュニケーションは、これまでしばしば一方的なものでした。自然界における「現実」の「知りたいことだけを知る」「聞きたいことだけを聞く」という姿勢です。こうした姿勢のひとつの大きな帰結が地球温暖化などの環境問題です。
これと同じように、社会科学を学ぶ私たちがたとえ「現場主義」を掲げたとしても、それが「知りたいことだけを聞く」「聞きたいことだけを聞く」のであれば、それは「現場の人々」を傷つけるだけになってしまいかねません。カウンセリングにおいて、こちらが「知りたいことだけを知る」「聞きたいことだけを聞く」ということをすれば、それがカウンセリングにならないのと同じです。
「現場主義」において重要なのは、「現場の人々」がなかなか語りはしないが心の底から語りたいことが何であり、また彼らが語ろうとしないのはなぜなのかを知ることです。これを知ることは本当に至難の業です。「現場の人々」との間に信頼関係を築くこと、「現場の人々」に共感できる能力を人間的にも学問的にも養うこと。やらなければならないことは山ほどにあり、しかもそれは遅々として進みません。しかし、あくまでもそれを目指すこと。これが本当の「現場主義」への遠いけれど、近道なのです。

龍谷大学大学院社会学研究科では、それぞれの分野で「現場主義」を実践しまた目指している多種多彩な教員が、基礎から応用に到る専門科目を担当し、皆さんの学びを支援します。この履修要項はその道しるべとなるものです。是非ともこの履修要項を熟読し、実り多い大学院生活を送ってください。

2017年4月

社会学研究科長

田中 滋

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