多様な専門性を持った皆さんとの連携

◾️琵琶湖・南湖の水草の有効利用を目的に設立された市民グループ「水草は宝の山」=「水宝山」の活動に関して、また少し前進がありました。以前より、水草堆肥については、経験的に農作物に効果があると言われてきましたが、学問的というか科学的な裏付けが明確にあるわけではありませんでした。私が参加している総合地球環境学研究所のプロジェクトの研究成果として、土壌生態学的な研究論文は発表されていますが、実際に農業で水草堆肥を使っていく上で必要とされる農学的な観点からの知見については確認することができていません。

◾️そのため、龍谷大学農学部のお二人の教員にお願いをして、水草堆肥の効果に関する農学的な研究を進めていただくことになりました。お二人は、土壌、肥料、植物栄養学についての専門家です。昨日は、水草問題を所管されている滋賀県庁琵琶湖環境部琵琶湖政策課の職員の方達にも龍谷大学にお越しいただき、お二人と意見交換をしていただきました。私は授業があったため、途中で意見交換の場から退席しましたが、いろいろ勉強になりました。「餅は餅屋」と言いますが、深い専門性を持った方達の横の連携の大切さを、より一層実感することになりました。水草問題の解決に向けてまた少し前進できたように思います。お二人の教員の皆さんには、心より感謝したいと思います。

◾️もう一つ、良いことがありました。「水宝山」の活動の一つは、切れて浜に漂着した水草を、地域の中で有効利用する仕組みを作っていくことにあります。これまで、そのような「水宝山」の活動を展開していく上で、法律的にクリアすべき課題が残っていました。長らく「水宝山」の活動の足かせになっていました。ということで、昨日に引き続き、今日も琵琶湖政策課の職員さんと一緒に、琵琶湖の砂浜を管理されている滋賀県庁の部署を訪問して相談をさせていただきました。その結果、有価物の採取や利益のために活動するのでない限り、河川法的に特に問題になるようなことはない、むしろそのような河川愛護活動はありがたいとの見解をお示しくださいました。こちらについても、心より感謝したいと思います。正直、ホッとしました。具体的な成果を生み出していくためには、まだまだ時間がかかりますし、今後も、さらに多くの多様な専門性を持った皆さんとの協働が必要です。引き続き、頑張ってまいります。

◾️以前、お世話になった同位体生態学の大御所の先生から、「I型」→「T型」→ 「π型」という話しを聞かせてもらったことがあります。環境問題の解決に向けて、特定の専門性だけでは限界がある。アルファベットの「I」は、そのような特定の専門性を表現しています。ですから、自分の研究の間口を広げていこう。隣接する分野や関連する分野についても、たとえディシプリンが違っても勉強していこう。これが「T型」です。「I型」よりも横に関心が広がっていますね。しかし、個人の努力だけではまだどうしようもない。「T」と「T」が連携する中で、「π型」になっていく必要がある。そのような話しだったかと思います。これは文理融合の研究を進めていくことの必要性に関連して話されたことです。「水宝山」の活動は、研究プロジェクトではありませんが、多様な専門性を持った皆さんとの協働ということからすれば、やはり「π型」を目指して行かねばなりません。多様な専門性の相補的な関係をデザインしていくことが必要になります。

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