「報告 社会福祉系大学院発展の ため提案 -高度専門職業人養成課程と研究者の並立をめざして」

■たまたまfacebookを読んでいて、知り合いの方の投稿で知りました。「社会福祉系大学院発展の ため提案 -高度専門職業人養成課程と研究者の並立をめざして」という報告です。「日本学術会議 社会学委員会 社会福祉系大学院のあり方に関する分科会」が2014年9月30日に発表しています。私の専門は、このブログのタイトルからもわかるように社会学です。とはいえ、私の勤務する社会学研究科は、社会学専攻と社会福祉学専攻にわかれており、4年間にわたって社会学研究科長の仕事をしてきたので、この報告のことがとても気になりました。以下は、この報告の結論である「まとめ」の部分の引用です。ここに書かれている課題を実現していこうと思うと、大学・学部・研究科間の連携にもとづく中長期的な経営戦略と、教員や事務職員の献身的な努力が必要となるでしょう。それに耐えられたところが生き残る…ということになるのかもしれません。

■以下に書かれていることの「当面の改革課題」については、龍谷大学社会学研究科では「制度検討委員会」や「カリキュラム検討ワーキンググループ」を設置し、社会学研究科全体の枠組みのかなですでに取り組んでいるところです。「当面の改革課題」の後半、社会人の学習ニーズに関しては、さらにいろいろ検討していく必要があります。「中長期的課題」に関しては、龍谷大学社会学研究科では「東アジアプロジェクト」を展開してきました。「人材養成」に関しては少しずつ成果が生まれてきいます。しかし、ここに書かれた高度な課題については、これから一層努力をしていかねばなりません。

5 まとめ
社会福祉系大学院の現状と改革課題を踏まえ、(1)当面の改革課題に対する提案、(2)中 長期の改革課題に対する提案に分けて記述する。
(1) 当面の改革課題
第1に、社会福祉系大学院は、これまで研究者養成教育と高度専門職業人養成教育の 2つの役割を担ってきたわけであるが、修士課程・博士前期では、この2つが渾然とし ているのが実情である。したがって、各大学院の教学編成方針に基づいて、修士課程・ 博士前期課程においては、社会福祉学の基礎教育(社会福祉教育の体系を価値、支援技 術、政策でもって位置づけ、教育方法と研究方法、および評価システム等のコアカリキ ュラム)を基盤に、高度専門職業人養成を中核としつつ、研究者養成との統合をめざし たカリキュラム構成に再編する必要がある。さらに、グローバルに活躍できる社会福祉の人材養成をめざした高度専門職業人養成および研究者養成に向けて博士後期課程との連続性を視野に入れた一貫した学位プログラムの構築が不可欠である。

第2に、これからの社会福祉系大学院の院生の多数を占めることが予測できる社会人大学院生に対応するには、多様な学習形態を設定するとともに、社会人の学習ニーズに 応えるような学習の時間帯や場所の自由度を増し、これまで仕事や遠距離などの支障か ら躊躇していた人たちの学習意欲を喚起し、大学院への進学ニーズを高める努力と工夫 が大切である。放送・e ラーニングなどの講義・演習ツールの開発も欠かせない。また、 大学院および付属研究所、そして企業や行政が組織的かつ継続的に実務現場と連携し、実証性を伴った幅広い社会福祉学を修学する教育プログラムを協働で開発し、社会福祉系大学院が社会人リカレント教育の地域拠点となることが求められている。

(2) 中長期の改革課題
第1に、欧米諸国に匹敵するアジアの社会福祉学の発展も急速に進んでおり、国際標準化を見越した博士課程教育プログラムを準備する必要がある。優秀な院生を確保し、体系的かつ世界に通用する高度な資質をもつリーダー養成を行うためには、欧米諸国の 先駆的な博士課程教育の優れた点を取り入れ、それらと連携する教育プログラムを開発 する必要がある。また、社会福祉学およびソーシャルワーク教育系の学部が韓国・中国 だけでなくアジアで増加しており、こうした大学での研究・教育者を養成していくうえで、日本の社会福祉系大学院の責任は大きい。博士課程学生を受け入れ、東アジアなどでの大学をはじめ、多様な国々で活躍する人材を養成することが必要である。そのため には、アジア諸国の社会福祉学の研究者との研究交流を深め、英語などでの講義を取り入れるなど学生を受け入れやすい環境整備も重要である。

第2に、研究者養成については、講座制および学科目制の弊害が叫ばれる中、それに 代わる研究者養成システムを構築するのが長らく困難であった。多様な学問分野の教員 が共同し、コースワークから研究指導や学位授与へ有機的につながりを持った大学院教育の体系化や競い合う研究組織の学際化は、研究者養成の新たな教育・訓練システムとなり得る可能性を有している。また、修士課程・博士前期と博士後期の連続した一貫教育を行うという方向性も検討に値しよう。これからの研究養成には、大学院の多様化・ 学際化は欠かせない要件となる。反面では、単独では、社会福祉学の研究者養成ないし は高度専門職業人養成に必要なカリキュラムを体系的に編成できないという大学院も存在する。そこで、複数の大学院および研究機関が協力して、カリキュラムの体系化や 研究の質の保証を行う「連合大学院」「連携大学院」などの構想(日本学術会議社会学 委員会社会福祉学分科会提言、2008年)を視野に入れた取り組みを積極的に推進してい く必要がある。

■この「報告」を、ある方にお伝えしたところ、私の気持をきちんと受け止めていただけました。安心しました。

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