「消滅する市町村」に関して

20140810sekai.jpg ■例の増田レポート「消滅する市町村」が一人歩きしているなと思っていたら、やはりこういう議論が出てきました。雑誌『世界』(岩波)の特集「『消滅する市町村』論批判」です。

■昨年の『中央公論』の12月号に、「壊死する地方都市 戦慄のシミュレーション」という特集記事が、そして今年の6月号では「消滅する市町村523〜壊死する地方都市〜」という特集記事が掲載されました。いずれも、元総務大臣の増田寛也さんと日本創世会議・人口問題検討分科会の研究がもとになっています(11年前に岩手県立大学に勤務しいただけに、元岩手県知事といったほうが私にはしっくりきますが)。この「増田リポート」、強いインパクトをもっているせいか、様々な場面で語られています。もちろん、この私自身も、気にしないではいられません。今回の『世界』の特集は、その「増田リポート」に対する批判です。もうあたりまえのようになった「限界集落」という用語が登場したときも、似たような感じがありました。

■「どうせ消滅するんだったら、何をやっても無駄じゃないか、無駄なところにお金を投資するのはやめよう…」的な言説が流布しだすと、予言の自己成就的なスパイラルにはまり、「消滅市町村」にが現実化していくスピードが加速するような展開になりはしないか…という心配もあります。このような「消滅市町村」の議論に便乗して、妙な動きが水面下で動いていないか…ということも心配になります。

■以下は、『世界』のサイトからの引用です。

「人口減少社会」の罠
坂本 誠

 本稿では、月刊誌「中央公論」に掲載された増田寛也東京大学大学院客員教授ら人口減少問題研究会による論文や、増田氏を座長とした日本創成会議・人口減少問題検討分科会が発表した提言など、増田氏を代表とする一連の論稿を「増田レポート」と総称し、その意味と問題点について、それが政策に及ぼすインパクトを含めて批判的に検討する。
 増田論文の根拠となるデータ、そして増田レポートの分析に問題はないのか。農山漁村における「ショック・ドクトリン」的効果を狙ったものともとれるこれらの論稿に、気鋭の研究者がメスを入れる。

「農村たたみ」に抗する田園回帰
──「増田レポート」批判 ──
小田切徳美

 市町村消滅を予測する「増田レポート」のインパクトは非常に大きかった。一部の地域には、「諦め」の気配もある。それを含めて、このレポートは地域に大きな混乱をもたらしつつある。さらに、この混乱に乗じて、いままで出来なかったことを一気に実現しようとする輩も見え隠れする。
 いま、必要なことは、こうした状況のなかで、事態を冷静に整理して、今後の足がかりを示すことであろう。そこで、本稿では、増田レポートとそのインパクトの実態、そこで生まれつつある「農村たたみ論」の意味、そして、その対抗軸のように発生しつつある若者を中心とする「田園回帰」傾向の実態や展望について論じる。

■9月8日発売予定の『世界』10月号でも引き続き、地方再生の問題が特集されるようです。予告には「安倍政権は『地方創生』関連法案を9月からの臨時国会に提出すると言われています。最近聞かれるようになった『ローカル・アベノミクス』にリアリティはあるのか。地方が生き続けられるためには何が必要なのでしょうか」とあります。

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